蓮生山熊谷寺

熊谷直実公生誕地、蓮生法師往生之地

「誕生寺」

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約4分

 浄土宗の総本山は、京都にあります知恩院(浄土宗開祖法然上人開山)です。この知恩院を筆頭に、東京芝の増上寺、京都の金戒光明寺、 知恩寺、清浄華院、福岡の善導寺(浄土宗二祖弁長上人開山)、鎌倉の光明寺(浄土宗三祖良忠上人開山)、長野の善光寺大本願の七大本山、 滋賀の蓮華寺の一本山、そして岡山の誕生寺、京都の光照院門跡、得浄明院、三時知恩寺の四特別寺院、さらに熊谷寺、久山寺、 蓮昭寺といった各一般寺院で浄土宗は構成されています。
 今回は、このうち、法力房蓮生法師(熊谷直実)ゆかりの地、岡山の誕生寺をご紹介させていただきます。
 



 誕生寺の正式名は、栃社山誕生寺といい、法然上人二十五霊場の第一番となっている。この地は、 崇徳上皇の御代の長承二年(一一三三)四月七日、 久米南町稲岡ノ庄の押領使漆間時国の長子としてお生まれになった法然上人の誕生の地である。

 建久四年(一一九三)には、法然上人の弟子である蓮生法師が、師の命により、上人の木像を背負ってこの地に訪れ、 旧邸を寺院に改めたとされている。

 JR津山線誕生寺駅から、 誕生寺道を五分ほど歩いて鉄道の高架橋をくぐると蓮生法師が法然上人の館跡を目前に、感激号泣し、 天地も裂けんばかりに念仏を称えたといわれている念仏橋がある。一メートルほどの小川にかかった石橋で、恥ずかしいことに、 私は気づかずに通り過ぎてしまい、あわてて引き返し、傍らの案内板で確認する始末であった。この小さな橋を、 当時の蓮生法師の胸中を想像しながら、ふみしめるように渡ると、まっすぐ前方には誕生寺の山門が目に入る。
 
 山門前にて合掌し、早速境内に入ってみる。山門をくぐると眼前には、逆木の公孫樹なるものが生えている。 法然上人十三歳の時にお手植えの銀杏であって、根が逆さまに伸びたという。確かに変わった銀杏であると思いながら、右手の方に目をやると、 毘沙門堂、阿弥陀堂、左手の方には、文殊堂、観音堂、そして正面には、御影堂(本堂)がある。 御本尊は阿弥陀仏で両脇に観音勢至両菩薩を随え、右左の陣には善導大師と法然上人の御木像が祀られている。 国の重要文化財にも指定されている立派な御影堂である。さらにその奥には、法然上人お誕生の奇瑞をつたえる両幡の椋、勢至丸 (法然上人の幼名)に右目を射られた明石定明が小川で右目を洗ったが、 以後片目の魚が出現するようになったという曰く付きの川である片目川がある。川を渡り右手には、法然上人産湯の井戸などがあり、 左手の坂を登ると、法然上人がご幼少のみぎり勉学された那岐山の菩提寺、母が祈願した岩間観音(棚原町・天台宗総本山)の本山寺などがある。


 さて、ここで法然上人の生い立ちについて少しばかり話しておきたい。
 法然上人の御両親である漆間時国公夫妻は長い間子宝に恵まれなかった。その為、夫妻は岩間観音に参籠祈願されたところ、その夜、 妻の秦氏は剃刀を呑む夢を見て懐妊し、月満ちて勢至丸さまが誕生された。そのとき、館の上には紫雲たなびき、 いずこからともなく二本の白幡が飛来し、ふたまたの椋の木にかかり輝き、幡についている鈴の音が天に響きわたり、 お誕生をたたえられたと伝えられている。

 何不自由なくすくすくと薫育された勢至丸さまであるが、九才のとき父時国公は、源内武者明石定明という武士によって、 夜討ちをうけて亡くなった。その遺言は「わが仇を討ってはならぬ、もし仇を討てば、相手の子もまたお前を仇としてねらい、 この世に争いの尽きることがない。思い止まって出家得度せよ。」というものであった。


  勢至丸さまは、菩提寺(奈義町高円)の観学徳業のもとにあずけられたが、観学は勢至丸さまの秀才ぶりと、 時国公の遺言を思うにつけ、徒らに辺郷で一生を過ごさせるには惜しいと考え、比叡山持宝房源光のもとに付託されたのである。勢至丸さま、 つまり法然上人は、ひたすら仏の道を歩まれることとなったのである。  
 

 その後の法然上人の足跡は、勝手ながら、またの機会にご紹介させていただくこととし、 蓮生法師が感激して詠まれた歌をご紹介して結びとしたいと思います。この歌は、 浄土宗御詠歌の第一番として今も多くの人々に唱和されています。

 両幡の 天下ります 椋の木は
 世々に朽ちせぬ 法の師のあと

(歌の大意)上人がお生まれになったとき、天の彼方から二流れの白い幡が飛んできて、 庭の椋の木に掛かり、美しく輝いたと伝えられている。この木とともにお念仏のみ教えも、時を越えていつまでも繁り栄えることであろう。

 自分自身を救い、その後の生き方を示していただいた師法然上人と、お念仏のみ教えへの一途な思いが込められている、 蓮生法師ならではの歌であるといえるでしょう。

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