蓮生山熊谷寺

「甲斐善光寺」

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 去る6月下旬、浄土宗青年会関東ブロックの研修会が山梨県甲府市にて行われました。暑さでは熊谷と並び有名な甲府盆地、 せっかく訪れたからにはと、この甲斐の地にある府中(甲府)五大寺のひとつ甲斐善光寺を参詣させていただきました。「牛に引かれて」 で有名な信濃(長野市)善光寺とともに、この甲斐(甲府市)善光寺も参詣しなければかた詣りであり、 その効果も半分であるなどと言われています。
  甲府市の善光寺は、山号を定額山、院号を浄智院、信濃善光寺とまったく同じ寺名であり、 甲府浄土宗の触頭寺院を勤めています。甲斐善光寺の始まりは、その縁起によると元禄元年(一五五八)に、 多くの戦国武将を震えさせたかの武田騎馬隊を指揮した信玄公が、 川中島の合戦の際に信濃善光寺の焼失を恐れて御本尊善光寺如来像をはじめ、 諸仏寺宝類をこの地に奉遷したことが始まりとされています。武田氏滅亡後、この御本尊は織田・豊臣氏を転々としましたが、 慶長三年(一五九八)、お告げを夢で見た徳川家康によって信濃へ帰座されることとなりました。現在の御本尊は、 この帰座された御本尊の前立仏として造立されたもので、一光三尊の形式をとり、秘仏とされています。 次の御開帳は平成二十二年頃となります。
 本堂(金堂)は撞木造りと呼ばれる独特の形式で、威風堂々とした山門とともに国の重要文化財に指定されています。 本堂の天井には巨大な龍が二頭描かれており、吊り天井となっているため、手を叩くと多重反響現象により共鳴が起こります。それゆえ、 鳴き龍と呼ばれています。また、境内にはその大きさのため、信濃から引き摺って運んだといわれている「引き摺りの鐘」 が今も時を告げています。本堂地下には、信濃善光寺や当山でもお馴染みの「戒壇廻り」が備えられています。
 宝物館には、史実とは異なるものの信濃善光寺参詣が伝承されている浄土宗の開祖法然上人の木造座像と、 こちらは参詣されたかもしれない蓮生法師木造座像(ともに伝鎌倉時代作)が安置してあります。
 法然上人、蓮生法師、そして戒壇廻り、当山と共通するところの多いこの甲斐善光寺、みなさまも是非一度ご参詣下さい。私も、 また季節を変え訪れてみたいと思います。恥ずかしながら、一句をもってお話を閉めさせて頂きます。

   甲斐の路 壇を歩む眼には 
     弥陀のはからひ 嬉しかりけり

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