蓮生山熊谷寺

「お彼岸」

1218 views
約3分

*2019年9月1日に投稿された記事です。

お盆も終わりもうすぐお彼岸となります。お彼岸について皆さまはどのように捉えられているでしょうか。お盆はご先祖さまが里帰りをされる日とされています。この前帰ってこられたばかりですよね。ですので、お彼岸は私たちがお墓に行ってお参りをする日、そうお考えの方が多いかと思います。

たしかにその通りでして、昭和23年制定の『国民の祝日に関する法』という法律では、秋分の日(秋の彼岸)については、「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」と定められています。そういった理由からも、お彼岸にはお墓参りをするのが習わしとなっているのです。

ところで、彼岸というのは彼の岸と書きます。彼の岸というのは向こう側ということを意味します。それに対する岸は此岸、すなわちこちら側ということです。彼岸はご先祖さまや先に往かれた愛するご家族が過ごされている浄土であり、此岸は私たちが暮らしているこの世界のことです。岸というからには当然、間に川が流れておりまして、これが三途の川となります。この川を隔ててご先祖さまたちと私たちは離れ々れとなっています。

あるお檀家さんがおっしゃっていました。あるとき夢の中に、昔よく一諸に遊んでくれた大好きなおばあさんを見かけたそうです。空の向こうの方に薄紫色をした雲があって、そこの上にあるとても綺麗なお家にいたそうです。嬉しくなって「おばあちゃん!」と駆け寄っていくと、このおばあさんは「まだお前の来るところじゃない。帰りなさい」と言っておい返したそうです。この方は大好きなおばあさんの言うことだったので、その通りにまわれ右をして走って帰ったそうです。

これは夢の中のお話しですが、大好きなおばあさんにまた会いたいという思いがあったからこそ見た夢なのでしょう。まさしく、薄紫色の雲が彼岸であり、空という三途の川を隔てて、この方がいた世界が此岸なのです。

現実にはいくら会いたいからと言っても、今この場で会うことはできません。だからこそ別れというものはつらく悲しいものなのです。

しかし、この別れは永遠の別れではありません。私たち浄土宗のご本尊である阿弥陀さまはここから遠く離れたところですが、西の方へ極楽浄土という世界を造られました。そして、私たちが南無阿弥陀仏と「阿弥陀さん、頼みますね」とお念仏を称えてお願いをすれば、その声を必ずお聞き下さっていて、私たちが命終えたときには必ず迎えに来てくださり、必ず浄土へと導き往生させてくださいます。すべての人々を救いたいという有難いお慈悲の願いを持たれた仏さまなのです。

お彼岸の期間は秋分の日を中日として前後三日間、合計七日間です。この中日には太陽が真西へ沈むので、浄土の正しい位置がわかり、その方向を向いてご先祖さまの供養をすれば自身の往生浄土も叶うとされています。

沈みゆく夕日を浴びながら、ご先祖さまたちを偲び、浄土への想いを馳せながらお念仏をお称えなさってはいかがでしょうか。愛する人といつか浄土でまたお会いするその日のために。同称十念。

FacebookでシェアTwitterでシェアPinterestでシェア